怖かったよ～！！

　会社のスリム君をめざし、まずは間食をヘラすべく、最低限の朝食（夕食）を取りすぐに歯磨き。
　行儀悪いけど、ネットしながらシャコシャコシャコシャコ。
　──カツン、カツン。
　・・・・なんか、今、変な音混じってなかったかな？
　それでも気にせずシャコシャコシャコシャ・・・・。
　──カツン。
　絶対、音した。
　なんだろ・・・？
　と、背後を振り返り、ふと顔を上げたハクさんの視界には、体長３センチ以上ありそうな蜂らしき姿が。
『ふぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！！！』←歯ブラシを銜えていたので声にならなかった。
　この蜂っぽいヤツが天井に当たって音を出していたのです！！
　ハクさん、速攻避難・・・・っ・・・・する場所間違えたっ！！
　そう、ハクさんは、キッチンへ避難しなければいけない所を、なんと玄関へと逃げてしまったのです！！
　キッチンに移動するには、今蜂もどきが飛び回っている部屋を通らないと行けないわけで・・・・。
　口腔には泡がイッパイで大ピンチ。しかし目の前も蜂もどきで大ピンチ。
　どうする？どうするっ！？
　何か・・・っ、玄関に何か無かったかな・・・っ！？
　あったっ！！！殺虫剤とちょっと容器が似てるファブリーズっ！！！
　役に立たねーーーーーーっ！！！！！
　いや待て待て！！もしもって事がある！！いくら主成分がトウモロコシ（動揺しつつ有効成分が入ってないか必死に読んだ）であっても、消臭できるんだからもしかしたらって事がある！！
　よしっ！！
　発射っ！！
　怖くて近寄れず噴射しても届かねーーーっ！！効くか効かないか全然わかんねぇ！！
　ダメだっ、玄関ではダメだ・・・！！
　ハクさんは必死に隙を狙い、蜂もどきが蛍光灯の紐にぶらぶらしている間に、ダッシュでキッチンへ。そこから洗面台へ。
　急いで扉を閉めて、口を洗って・・・。
　ひとまず、ピンチの一つは脱出した。
　後は、大問題の蜂もどきだ。
　なぜハクさんがこれほど動揺しているかというと、実は今、家に一人だったのです。
　少しずつ動けるようになってきたハク母が、ハク妹とお盆の準備をするために買い物に行っていたのです。
「ついでに、何か買ってくるものある？」
「あ～、玄関に蟻が入ってきてたからその薬と・・・あと、殺虫剤かな？」
　・・・・・・・・・・・・・・・・・今・・・・・・・・今の我が家に殺虫剤ってなかったんだったっ・・・・・！！！！
　ハクさん、今度はキッチンで大パニック。
　効くモノ・・・・あの蜂もどきに効くモノ・・・っ！！
　──コレ、効くかな・・・・。
　ハクの手には、ダニアースが。
　つーか、コレしか・・・・。
　キッチンの扉をそーっと開け・・・、うわぁ・・・・ブンブン羽音がしてるよ・・・・。
　蛍光灯周りにいる蜂もどきに、いざ噴射・・・・って、その真下のテーブルには食材がっ・・・！！
　ハクさん、半泣きで部屋に入り、食材を避難させる事に成功。
　再びキッチンからダニアース片手に様子を見る。
　あまりに広範囲で飛び回っているので、扉から手を出すのさえ恐ろしい・・・・っ！！
　でも一人・・・うぅ・・・うぅうう・・・神様・・・どうしてハクにこんな試練を・・・っ！仕事場で充分だってのっ・・・！！
　しかし、頑張って２回発射。上手い事届いたらしく、蜂もどきの動きが鈍くなって・・・鈍く・・・み、見失ったっ・・・！！
　どこっ！？どこ行ったのっ！？
　ビクビクしたまま５分経過。キッチンから覗き込んだ状態のハクの耳に、凄まじい羽音が。
　が、どこから聞こえてるのか分からない。
　おそらく、どこか一カ所に居てそこでのたうってると思うんだけれども・・・。
　分からない。本当に全く。
　右なのか左なのか上なのか下なのか。
　相変わらず羽音はブンブンしているので、居るのは確実。
　うぅ・・・・ううぅ・・・・。
　羽音が途切れ途切れになるのを待って、ハクは部屋へ足を踏み入れました。
　右手にはダニアース、左手にはいらない雑誌。
　うぅ・・・ううううううっ・・・・！！
　ドコ・・・？ドコだ・・・・？
　この時点で、ハクさんの歯はカチカチ震えちゃってどうしようもなかったです。
　いたっ！！畳の上で死にかけてる！！
　い、今のウチに、トドメのダニアースを・・・。
　しゅふ～～・・・・・。
　頼みの綱のダニアースを使い切ってしまいました・・・っ！！
　後はこの雑誌で叩き潰すしか・・・っ！！
「ううぅ～～～っ！！」
　ビシッ！！
「ううううぅ～～～っ！！！」
　ビシッ！ビシッ！！
　・・・・やりましたよ、戦いに勝ちましたよ・・・っ！！
　亡骸に雑誌を乗せ、万が一ソコから居なくなったら怖いから、雑誌の上に更に雑誌を、更に更に雑誌を、更に更に更に雑誌を乗せて置きました。
　ハク母・・・っ、早く帰ってきて・・・っ！！！！
　ちなみに、現在ハクさんはボロ泣きでコレ打ってます。