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その時その時楽しんでいるモノを、無節操に書き連ねています。 日常、ゲーム、手芸以外にも、お人形も普通に登場しております。 大きさ、メーカー、性別も様々、意志を持って話している時もありますから、苦手な方はご遠慮ください。 微温猫庭園というディーラー名で、イベントに参加しています。 写真の無断転載も禁止です。
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 サイトの方で更新しているピクなのですが、なんと挿絵を入れました。
 以前、凌駕さんが絵日記で描いてくれたモノで、ハクが個人的に保存しておいたモノです。
 凌駕さんにコッソリと了承を得て、今までの話に何枚か入れてます。
 小さいアイコンもありますが、元々、あのアイコンが合ったから、あの話は出来たのです。
 ……いつも、ハクが書けたのは、周りの人があってこそだと思いました。
 ピクってどんなの?と疑問に思っていたお嬢さん方!
 ピクってあんな感じの可愛い子達なんです!

 凌駕さんっ、我が儘きいてくれてありがとうございました!
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 凌駕さんお誕生日おめでとう企画。
 ……と言っても、凌駕さんはご存じモノですが。
 あちらで大盤振る舞いの企画をやってくれているので、ハクも便乗です。
 オタクの更新話ですので、ダメな人はスルーで。
「ふぅ~、おれ、とってもいいおしごとした!」
 掻いてもない汗を手の甲で拭う仕種をした捲簾は、とってもとっても良いお顔だった。
 というか、良いお顔すぎて、普段の捲簾を知ってる天蓬が見たら、間違いなく焦るお顔だった。
 でも、居ないから捲簾の良いお顔に突っ込む人はいない。
「あ、そうだ!おしごとしたあとだから、ぎゅーにゅーのんじゃおうっと!ひとしごとのあとのいっぱいはかくべつだもんな!」
 うんうん頷いて、スキップ混じりに冷蔵庫へ向かう、そんな捲簾の午後だった。

 なんか痒い。
 お昼寝から覚める時にはあまりにも似合わない感覚で、天蓬はうっすら目を開けた。
 なんだか、とにかく痒いのだ。
 痒い・・・というか、むしろむず痒い。
「変だな・・・」
 今だうっすらとしか開いていない目をシパシパさせ、片手で近くに放り出していた眼鏡に手をやりおざなりにかける。
「痒い・・・」
 寝ぼけた頭で、無意識に痒い部分に手を伸ばした天蓬は、その部位にギョッとした。
「なんで・・・っ、なんで僕のチンチン丸出しの挙げ句に色々装飾が施されちゃってるんですかっ・・・!」
 眠気も吹っ飛ぶその光景に、天蓬は本当に目を見開いた。
 丁寧にズボンもパンツも引き下ろされ、ソコが丸出しなのだ。
 まぁ、良い。
 本当はそれもあんまり良くないんだけど、とりあえず今は良い。
 問題は、丸出しになってる事ではないのだ。
「なんですかっ、これっ!?キラキラしちゃってるっ!スパンコールっ!?なんかグルグルとリボンまで巻かれてるしっ!なんでこんなモノが僕のチンチンに付いてるんですかっ!?しかも先っちょに顔が描いてあるっ!!」
 己の股間に向かってひたすら叫ぶ天蓬の視界に、ちょろりと入り込んだ小さい黒い影。
 ソレは間違いなく・・・。
「ちょっとけんれ・・・っ、ってなんでそんなに良いお顔してるんですかっ!?これっ、どういう事ですっ!?」
「てんぽのちんちん、かわいくなった・・・v」
 プクプクほっぺをちょっぴりバラ色に染めている捲簾は、ウットリとした良いお顔を天蓬に披露する。
「可愛くなったって・・・っ、こんなスパンコールとかどうしたんですかっ!?」
「はっかいがおれとごじょーのおかばんつくってるときに、くっつけてるのをもらったんだv おれ、てんぽのちんちんにつけたらかわいくなるとおもってたんだけど、やっぱりなったーv」
「なったーv じゃありません!」
「てんぽ、なんでおこってるんだ?」
 キョトリとして首を傾げてみせる仕種は、そりゃもう可愛いのだが。
 こんな可愛さで、寝てる飼い主のチンチンに必死にスパンコール付けてたり顔描いたりしたのかと思うと、なんとも微妙な心理だ。
「おれな、てんぽのちんちんかわいくするためにがんばっちゃった!」
 えっへんと胸を張っている捲簾のお口には、うっすらと白い膜が付いているので、仕事終わりの一杯で牛乳を飲んだのは間違いない。
「捲簾・・・」
 力が抜けてヘナヘナと倒れ込む天蓬は、やっぱりチンチン(顔つき)丸出しだ。
「どうだ?どうだ?てんぽきにいったか?」
「えっと・・・びみょうです・・・」
 ふにゃりと答える天蓬に、どうしてか理由が全くわからない捲簾は、やっぱり首を傾げて不思議そうにお耳をピルピルさせて見せるのだった。
 いつものようにお昼寝を堪能していた八戒は、一人起きだし、ソッとキッチンへと向かった。
 お昼ご飯を皆で食べて、軽く遊んでのお昼寝。
 その後、子猫ちゃんとその飼い主(天蓬)がおやつを欲しがるのは目に見えている。
 そうなる前に、彼らが起きる時間に合わせておやつを用意しておいてあげようという、八戒の優しい気遣いだ。
 子猫ちゃん達が大好きな八戒特製のスコーンと、特製のジャムと生クリームを準備し、飲み物も紅茶やレモネードを揃えたり。
 楽しい時間の為に、八戒がひたすら手を動かしていると、小さい影がチョコリと現れた。
「あれ、捲簾。起きちゃいましたか?」
「うん、あのな、おれな、はっかいになそうだんあるんだ」
「相談・・・ですか?」
 大抵の事は、飼い主である天蓬に相談するであろう捲簾が、コッソリと起きだして秘密のように八戒に相談に来る。
 ソレは、天蓬の事で相談がある。と言っているワケで。
 八戒は手を休め僅かに目を細めると、抱き上げた捲簾を専用の椅子に座らせ、自らも正面に腰を下ろす。
「僕で良ければ幾らでも聞きますからね?どうしました?」
「・・・あのな・・・。おれな・・・」
「はい?」
「くろいのもかっこういいけど、ぴんくのもかわいいとおもうんだ・・・」
「何がです?」
「てんぽのちんちん」
「ちんちん!?」
 思わず出てしまった声を遮るように、八戒は慌てて手を口に当てた。
 いくら冷静が売りの八戒でも、いきなりちんちん言われたら、そりゃ大声も出るってもんだ。
「うん、おれな、てんぽのちんちんはぴんくがいいなぁっておもうんだ」
「な、なんでです?」
「だって、そのほうがかわいくね?」
 まん丸おめめをキョトンとさせて、軽く首を傾げている姿は愛らしいのだが。
 なんせ言ってる事はちんちんの色の相談だ。
 このギャップに、八戒はなかなか冷静さが取り戻せない。
「そ、そこに可愛いとか可愛くないとか、大事なんですか?」
「だいじだ。とってもとってもだいじだ」
 キリッと口許を引き締め、ウンウン頷く捲簾に、どうしてかこれ以上その理由を突っ込めない。
「でもな、てんぽのちんちんはもうぴんくにならねぇんだって。・・・はぁ・・・だったらどうしたらかわいくなるかなぁ・・・」
 ガッカリというか、憂いを見せる姿は、妙に大人びて見えるのだが、なんせちんちんだ。成長を喜んでいる場合じゃない。
 今まで、ソコに可愛さを求めた事も、可愛らしくしたいと思った事もない八戒は、本当にこの場をどうして良いか悩んだ。
 そんな飼い主を助けるように、悟浄がヒョッコリと顔を出す。
「あのな、おれな、いいかんがえある!」
「ほんとかっ!?」
「ほんとだっ!ちーっとまってて!」
 律儀に片手を出して『待ってて』ポーズを見せた後、悟浄はトテトテと走り、自分のお宝ボックスへと手を伸ばした。
 ソコから取りだしたモノを片手に握りしめ、悟浄は戻ってきた。
「はいっ、これにーちゃんにやるっ!」
 捲簾に差し出された手に握りしめられていたのは、何の変哲もないリボンだ。
「これな、このあいだもらったくっきーのはこにむすんであったんだ。おれな、かわいかったからとっておいたんだ」
「うんうん」
「これ、ちんちんにむすんだらかわいくなるとおもうんだ!」
「なるほどっ!ごじょうはかしこいなっ!!
 なるほどって納得しちゃったよ!声を挟む事も出来ず、成り行きを見守っていた八戒は、静かに目を見開いた。
 つーか、ソレしか出来なかった。あまりの展開の早さに。
「おれ、このあいだちょうちょむすびができるようになったから、かわいくむすべるな、うん」
「にーちゃん、がんばれ!」
「がんばるぞ~!」
 頑張っちゃうんだっ!?やっぱり驚きながらも八戒は口を挟めない。
 もうどう訂正すれば良いか分からないからだ。
 そんな八戒の焦りを、子猫ちゃん達は当然知らない。
「うまくむすべたらおしゃしんとってみせてやるな!」
「たのしみ~v」
 ワクワクと期待に頬を染める子猫ちゃん達の計画を、今一番聞いていなくちゃいけない人物は今だオネム中。
 八戒は、どうするべきかしばし悩む。
 明日か明後日ぐらいに、「八戒酷いです~!」と涙目で訴えられるのもわかっているのだけれど。
 こんな事言い出すのは、今のウチぐらいなのだ、きっと。
 だったら。
「まぁ、いっか?」
「ん?」
「いえいえこっちの話ですよ。さっ、テン兄さんを起こして、おやつにしましょうか?」
「はーい!」
「はーいv」
 元気よくお返事する子猫ちゃん達に微笑み、八戒はおやつの準備を再開したのだった。
 小さいテーブルに並んで座り、尻尾をゆらゆらさせている子猫ちゃんたちは、その愛らしい容姿とは逆に難しい顔をしてみせている。
「うむむ~」
「うむむむ~」
 ほんのちょっぴりお口をへの字にし、持っている色鉛筆を必死に短冊に向かわせるのだが。
「おねがいごとって・・・」
「むずかしいな・・・」
 毎年のことだが、こうして七夕になると、飼い主たちは必死に準備し行事を楽しませてくれる。
 それは子猫ちゃんたちにとっては幸せなことだが、この短冊に書くお願いが、毎年悩みの種なのだ。
 毎日、お腹がぽんぽこりんになるまで食べられるご飯、暖かいお風呂、太陽の匂いがするふんわりお布団。
 ・・・そして隣には、大好きな飼い主の笑顔。
 ほかには何も要らないし、欲しいとも思わない子猫ちゃんたちにとって、お願い事は難しいのだ。
「ごじょう、どうだ?」
「だめだ、にーちゃんは?」
「おれもだめだ」
 二人で顔を見合わせて、やっぱり唸ってみせる。
「二人とも、それほど考え込まないで」
「簡単な事で良いんですよ」
 キッチンに立ってる飼い主二人が、手を休めず助言を出す。
 折角の七夕。二人に美味しいモノを、いつも以上に食べさせてあげたいのだ。
 そんな二人の手元からは、次々と料理が作られ、幸せな香りが流れていく。
 子猫ちゃんたちの小さいお鼻にも、その香りはしっかりと届いていて。
 そっちにも気をとられ、ますますお願い事が思いつかないのだ。
「おっと」
「あぶない、あぶない」
 つい、口元に垂れそうになった涎を、揃っておててで拭う。
 そんな幸せな様子に、飼い主たちがついクスクス笑ってみせる。
「あ、おれ、きまった」
「うんうん、にーちゃんもだ」
 ハッとして見せた二人は、慌てて短冊に向かい、一生懸命に文字を綴りだす。
 日ごろのお勉強の成果か、さほど時間をかけずに、短冊にはお願い事が記された。
「でーきたv」
「かざりにいくぞv」
「うんv」
 大事な短冊を手にし、みんなで飾り付けをした笹へと向かう。
 折り紙を使って可愛く飾り付けられた笹は、若干重そうに枝を垂れているが、まだ頑張ってくれそうだ。
 二人は手の届く枝になんとか短冊を結びつけると、いそいそとキッチンへと向かった。
 なんといっても、楽しい七夕。
 飼い主たちが、自分たちの好物ばかり作ってくれているのはわかっている。
「たのしみ~v」
「いーっぱいたべちゃうぞ~v」
 くふくふとグーにしたおててを口元へと当てた。
「お願い事、書けました?」
「うんv」
「ちゃんとかけたv」
「それはお疲れ様でした。じゃあ、ご飯にいましょうか?」
「はーいv」
「わーいv」
 待ってましたと、両手をあげる子猫ちゃんたちに、飼い主は目を細めた。
 どこにでもある、家族が行事を楽しむ風景。
 それが、とても大切だと、彼らはちゃんと知っているのだ。

 深夜、子猫ちゃんたちが寝静まった後、飼い主たちが目にした短冊。
 一生懸命書かれたお願い事に、彼らは今の生活に改めて感謝した。

「だーいすきなてんぽとはっかいとごじょーがあしたもわらってますように」
「おれのだいすきなはっかいとてんぽーとにーちゃんがにこにこできますように」

 小さな子猫ちゃんたちの大きなお願いは、それだけで幸せになる。
 子猫ちゃんたちが笑えるように、その笑顔を守れるように。
 飼い主たちは、揃って幸せな決意を新たにしたのだった。
「あれ、こんな所に熱帯魚の店が出来てます」
 呟くというか、思わず出てしまったらしい兄である天蓬の言葉に、隣を歩いていた八戒が思わずそちらの方向へと顔を向けた。
 ソレほど新しい商店街ではないのだが、足元の石畳や店舗の外壁が、どことなく西洋を思わせる。
 そんな町並みの一角に、その店はあった。
 歩道と店舗を仕切る壁は一面のガラス張りで、店内にある水槽がハッキリと見て取れる。
 ソコに泳ぐ華やかな彩りは、間違いなく熱帯魚なのだろう。
 どうやらかなりの数を揃えているらしく、ガラス張りに沿って置かれている水槽には、珍しい色の小さい生き物が優雅に漂っている。
「へぇ、可愛らしいですね」
 軽く答えると、どちらともなく向きを変え、店に歩み寄った。
 ガラス越しとはいえ、尾びれを揺らして泳ぐ熱帯魚たちは、綺麗で優雅そのものだ。
 見ようと思ったわけでもなく、ソレほど興味らしい興味があった分野ではないのだが、なんとなくガラス沿いに歩いて次々と水槽を覗き込む。
 その水槽の一つに、その子は居た。
「あれ、天ちゃん見て下さい。ほら、この子」
 首を傾げる八戒がチョイチョイと指さした水槽は、金魚の水槽らしい。
 赤や黒、そして白を纏う金魚たちが、ヒラヒラと泳いでいるのだが。
「・・・あれ?」
 八戒同様、水槽を覗き込んだ天蓬も首を傾げてみせる。
 ヒラヒラと水の中を舞う金魚たちの中に、一匹だけ不思議な子が居たのだ。
 透明な水に映える緑の水草たち。
 その頼りない揺れる水草に必死に掴まり、顔を自ら水上に出している赤い金魚がいるのだ。
「・・・変な子ですね」
「ですねぇ」
 キョトンと見ている二人に気づいたらしい金魚は、うんしょうんしょと水草を手繰り寄せつつ移動しガラスに近づいていく。
 とてもじゃないが泳ぐとは言い難い姿に、目を離せなくなった二人の側に辿り着いた金魚は、チョコリと首を傾げて見つめている。
「ふふっ、この子、僕らに興味を持ってますよ」
「可愛いですねぇ。でも珍しくないですか?自ら顔を上げてるのに平気なんて」
「確かに」
 頭の中を疑問でイッパイにしつつ、ただひたすら見つめ合う二人の前で、ソレは起こった。
 二人に興味を示していた金魚は、もっと近づこうとしたのだろう、小さい手を水槽に押し当てたのだがいかんせん濡れている。
 よってツルリと手を滑らせ、その勢いでチョポンと水中へと沈んでいった。
「あ、滑っちゃいましたね」
 おやおや、なんてしばし笑う二人であったが。
「・・・天ちゃん、変じゃないですか?」
「・・・や、やっぱり八戒もそう思います?」
「・・・こ、この子っ、溺れてませんっ!?」
「間違いなく溺れてますっ!」
 水中に身体を沈めた金魚はそのまま泳ぎ出すハズなのだが、そんな素振りは全く見せず、尾びれや両手をがむしゃらに動かし苦しげに顔を歪めているのだ。
「金魚なのに溺れちゃってますよ!!」
「お店の人に教えてあげないと!!」
 元々、さほど感情表現が激しい方ではなく、むしろ冷静沈着でクール。なんて言われちゃう兄弟であるが、本来泳ぐ生き物が溺れているという事態にそんな雰囲気欠片も出せない。
 このままでは金魚が大変な事になるのだ。
 慌て出す二人が行動に移そうとした瞬間、とても金魚とは思えない早さで泳ぎ出す黒い子が居た。
 ドコで見ていたのか知らないが、尾びれを無駄なく動かし泳ぐというより、光の速さの如く移動する金魚は、一瞬で溺れている金魚に辿り着くととっとと身体を抱え水上を目指す。
 水上に顔を出した途端、ぷはっ!と小さく口を開けた赤い金魚を抱えたまま、水上に顔を出しても特に問題もないのか黒い金魚も悠々と水草へと近づく。
「・・・仲間が助けてくれたんですねぇ」
「こんなに小さいのにとっても偉いです」
 水草を掴めた赤い金魚は、小さいながらも「ふぅ~」と安堵して見せ、助けてくれた黒い金魚にヘラリと笑って見せた。
 黒い金魚は「気にするな!」と言わんばかりに、ウンウンと頷いてみせる。
「このこ達、仲が良いんですね」
「きっとこの黒い金魚は、何度もこうして赤い金魚を助けてあげてるんでしょうね」
 こんなに小さくても友情って芽生えているんだな。なんて、感動している二人であったが。
 今、彼らは一連の光景を見たからわかったワケで。
 つまり、見てなかったらわからないワケで。
 となると・・・・。
「見てない人が・・・」
「このこ達をそれぞれ別々にお買いあげしたら・・・」
 仲の良い金魚たちは引き裂かれてしまい、おそらく一生会う事は出来なくなるのだろう。
「それは・・・」
「ちょっと・・・」
 これほど仲の良い二匹が離されてしまう。
 その様子を想像すると、かなり胸が痛んでしまうのだ。
 その場で立ちつくした二人は、しばし考え、やがて揃って店内へと入っていった。

「まぁ、こういう事もありますよね」
「はい」
 天蓬の手には真新しい水槽と道具一式。
 八戒の手には、少なめの水が入っているビニール袋。
 勿論、中には赤い金魚と黒い金魚が仲良く入っている。

 新たに増えた家族達に、二人の帰宅する足は自然と速くなったのだった。
 子猫ちゃん達の前にあるのは、熱々のホットプレート。
 ジュージューと音を立てて色を変えていく食材から、真ん丸おめめを離す事が出来ない。
「んまそ~v」
「まだかな?まだかな?」
 すでに辺り一面香ばしい匂いがしているせいで、子猫ちゃん達の期待は最高潮だ。
 勿論、その期待を裏切ったり焦らしたりしたくない飼い主達は、良い色になった肉の一枚を子猫ちゃんのご飯に乗せてやる。
「焼く前にタレに漬け込んでありますから、そのまま食べていいですよ」
「いただきまぁす!」
「いっただきまぁす!」
 元気に挨拶をして見せた子猫ちゃん達は、持ち続けていたフォークを勢い良くご飯に向かわせた。
 お肉の下のご飯と一緒に、ちょっと待ちきれずに濡れちゃってるお口の中へ肉と投入する。
「んにゃあ~…v」
「しわわせ~v」
 噛み締めるごとにたっぷりの肉汁が溢れだし、それが八戒特製の甘めのタレと一体となりご飯と混じりあう。
 ちょっとした高級焼肉店の味になっているお口の中に、子猫ちゃん達の目はトロンと蕩け、ホッペは薔薇色に染まった。
「ほら、チーズ入りのソーセージもありますよ」
 イソイソと、天蓬が焼けたばかりのモノを二人のご飯に乗せてあげる。
 猫舌である子猫ちゃん達は、急いでフーフーを開始した。
 だって、一刻も早く食べたいのだ。
 飼い主達はその隙に、次に食べさせてあげる食材に手をつける。
 肉は勿論、予め蒸してある色とりどりの野菜達や、子猫ちゃん達の大好物の鮭のハラスなんかも、隅っこで焼いていたりする。
 子猫ちゃん達が、好きなモノを好きなだけ食べられるように。
 忙しない飼い主達と同様に大変だった子猫ちゃん達は、やっと冷えてきたソーセージに齧り付いた。
 プチンッと音を立てて切れたソーセージは、子猫ちゃん達のお口の中で大量の肉汁を溢れさせる。
 更に肉の甘みや、チーズのコクが混じりあうのだから、美味しいに決まっているのだ。
 もはや咀嚼にひたすら使われているお口は、言葉を発する余裕もない。
 その代わりにと、可愛い尻尾をブンブンしてみせた。
「お家焼肉って楽しいですよね~」
 お肉を頬張り、天蓬がしみじみと告げると、向かいに座っている八戒がその通りだと頷いて見せる。
「好きなモノ焼けますし、時間を気にしないで良いですもんね」
「あと、これもね」
 クスクス笑う天蓬が、ビールの缶を掲げて見せた。
 車で店に行ったなら、どちらかが運転する為に、飲酒は出来ない。
 でもお家焼肉なら、美味しいお肉を食べて、二人でビールを飲む事だって大丈夫なのだ。
 それに、お金だってグッと安くすむ。
 その分を食材に回し、みんなで楽しむ事も出来る。
「お野菜もお肉も鮭も美味しいしv」
「楽しくってしわわせですね」
「はい~」
 ニコニコ笑う飼い主を見られれば、子猫ちゃんだってニコニコになる。
「おうちごはんたのし~!」
「みんなでモグモグしわわせ~v」
 食べ切れないぐらいのご飯にお肉に魚にお野菜達。
 野良の時と違い、空腹は、恐怖ではない。
 空腹は、美味しい時間を過ごすお知らせなのだ。
 ちっちゃいお口を一生懸命動かして、ご飯を頬張る子猫ちゃん達は、ソレをちゃんと知っている。
 彼らを愛して止まない飼い主達が、時間をかけて教えてくれたからだ。
 お腹と同時に心も満腹にしつつ、彼らは焼肉を堪能し続けたのだった。
プロフィール
HN:
ハクナオヤ
HP:
性別:
女性
職業:
旅人(食いしん坊グラファー)
趣味:
色々適当に
自己紹介:
ひたすら切り絵を練習中。編み物なんかもやってます。
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