忍者ブログ
その時その時楽しんでいるモノを、無節操に書き連ねています。 日常、ゲーム、手芸以外にも、お人形も普通に登場しております。 大きさ、メーカー、性別も様々、意志を持って話している時もありますから、苦手な方はご遠慮ください。 微温猫庭園というディーラー名で、イベントに参加しています。 写真の無断転載も禁止です。
[363]  [362]  [361]  [360]  [359]  [358]  [357]  [356]  [355]  [354]  [353
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 小さいテーブルに並んで座り、尻尾をゆらゆらさせている子猫ちゃんたちは、その愛らしい容姿とは逆に難しい顔をしてみせている。
「うむむ~」
「うむむむ~」
 ほんのちょっぴりお口をへの字にし、持っている色鉛筆を必死に短冊に向かわせるのだが。
「おねがいごとって・・・」
「むずかしいな・・・」
 毎年のことだが、こうして七夕になると、飼い主たちは必死に準備し行事を楽しませてくれる。
 それは子猫ちゃんたちにとっては幸せなことだが、この短冊に書くお願いが、毎年悩みの種なのだ。
 毎日、お腹がぽんぽこりんになるまで食べられるご飯、暖かいお風呂、太陽の匂いがするふんわりお布団。
 ・・・そして隣には、大好きな飼い主の笑顔。
 ほかには何も要らないし、欲しいとも思わない子猫ちゃんたちにとって、お願い事は難しいのだ。
「ごじょう、どうだ?」
「だめだ、にーちゃんは?」
「おれもだめだ」
 二人で顔を見合わせて、やっぱり唸ってみせる。
「二人とも、それほど考え込まないで」
「簡単な事で良いんですよ」
 キッチンに立ってる飼い主二人が、手を休めず助言を出す。
 折角の七夕。二人に美味しいモノを、いつも以上に食べさせてあげたいのだ。
 そんな二人の手元からは、次々と料理が作られ、幸せな香りが流れていく。
 子猫ちゃんたちの小さいお鼻にも、その香りはしっかりと届いていて。
 そっちにも気をとられ、ますますお願い事が思いつかないのだ。
「おっと」
「あぶない、あぶない」
 つい、口元に垂れそうになった涎を、揃っておててで拭う。
 そんな幸せな様子に、飼い主たちがついクスクス笑ってみせる。
「あ、おれ、きまった」
「うんうん、にーちゃんもだ」
 ハッとして見せた二人は、慌てて短冊に向かい、一生懸命に文字を綴りだす。
 日ごろのお勉強の成果か、さほど時間をかけずに、短冊にはお願い事が記された。
「でーきたv」
「かざりにいくぞv」
「うんv」
 大事な短冊を手にし、みんなで飾り付けをした笹へと向かう。
 折り紙を使って可愛く飾り付けられた笹は、若干重そうに枝を垂れているが、まだ頑張ってくれそうだ。
 二人は手の届く枝になんとか短冊を結びつけると、いそいそとキッチンへと向かった。
 なんといっても、楽しい七夕。
 飼い主たちが、自分たちの好物ばかり作ってくれているのはわかっている。
「たのしみ~v」
「いーっぱいたべちゃうぞ~v」
 くふくふとグーにしたおててを口元へと当てた。
「お願い事、書けました?」
「うんv」
「ちゃんとかけたv」
「それはお疲れ様でした。じゃあ、ご飯にいましょうか?」
「はーいv」
「わーいv」
 待ってましたと、両手をあげる子猫ちゃんたちに、飼い主は目を細めた。
 どこにでもある、家族が行事を楽しむ風景。
 それが、とても大切だと、彼らはちゃんと知っているのだ。

 深夜、子猫ちゃんたちが寝静まった後、飼い主たちが目にした短冊。
 一生懸命書かれたお願い事に、彼らは今の生活に改めて感謝した。

「だーいすきなてんぽとはっかいとごじょーがあしたもわらってますように」
「おれのだいすきなはっかいとてんぽーとにーちゃんがにこにこできますように」

 小さな子猫ちゃんたちの大きなお願いは、それだけで幸せになる。
 子猫ちゃんたちが笑えるように、その笑顔を守れるように。
 飼い主たちは、揃って幸せな決意を新たにしたのだった。
PR
プロフィール
HN:
ハクナオヤ
HP:
性別:
女性
職業:
旅人(食いしん坊グラファー)
趣味:
色々適当に
自己紹介:
ひたすら切り絵を練習中。編み物なんかもやってます。
フリーエリア
 ランキングに参加中。
にほんブログ村 その他日記ブログ 日々のできごとへ
カレンダー
05 2025/06 07
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
カウンター
ブログ内検索
QRコード
忍者ブログ [PR]