その時その時楽しんでいるモノを、無節操に書き連ねています。
日常、ゲーム、手芸以外にも、お人形も普通に登場しております。
大きさ、メーカー、性別も様々、意志を持って話している時もありますから、苦手な方はご遠慮ください。
微温猫庭園というディーラー名で、イベントに参加しています。
写真の無断転載も禁止です。
「あれ、こんな所に熱帯魚の店が出来てます」
呟くというか、思わず出てしまったらしい兄である天蓬の言葉に、隣を歩いていた八戒が思わずそちらの方向へと顔を向けた。
ソレほど新しい商店街ではないのだが、足元の石畳や店舗の外壁が、どことなく西洋を思わせる。
そんな町並みの一角に、その店はあった。
歩道と店舗を仕切る壁は一面のガラス張りで、店内にある水槽がハッキリと見て取れる。
ソコに泳ぐ華やかな彩りは、間違いなく熱帯魚なのだろう。
どうやらかなりの数を揃えているらしく、ガラス張りに沿って置かれている水槽には、珍しい色の小さい生き物が優雅に漂っている。
「へぇ、可愛らしいですね」
軽く答えると、どちらともなく向きを変え、店に歩み寄った。
ガラス越しとはいえ、尾びれを揺らして泳ぐ熱帯魚たちは、綺麗で優雅そのものだ。
見ようと思ったわけでもなく、ソレほど興味らしい興味があった分野ではないのだが、なんとなくガラス沿いに歩いて次々と水槽を覗き込む。
その水槽の一つに、その子は居た。
「あれ、天ちゃん見て下さい。ほら、この子」
首を傾げる八戒がチョイチョイと指さした水槽は、金魚の水槽らしい。
赤や黒、そして白を纏う金魚たちが、ヒラヒラと泳いでいるのだが。
「・・・あれ?」
八戒同様、水槽を覗き込んだ天蓬も首を傾げてみせる。
ヒラヒラと水の中を舞う金魚たちの中に、一匹だけ不思議な子が居たのだ。
透明な水に映える緑の水草たち。
その頼りない揺れる水草に必死に掴まり、顔を自ら水上に出している赤い金魚がいるのだ。
「・・・変な子ですね」
「ですねぇ」
キョトンと見ている二人に気づいたらしい金魚は、うんしょうんしょと水草を手繰り寄せつつ移動しガラスに近づいていく。
とてもじゃないが泳ぐとは言い難い姿に、目を離せなくなった二人の側に辿り着いた金魚は、チョコリと首を傾げて見つめている。
「ふふっ、この子、僕らに興味を持ってますよ」
「可愛いですねぇ。でも珍しくないですか?自ら顔を上げてるのに平気なんて」
「確かに」
頭の中を疑問でイッパイにしつつ、ただひたすら見つめ合う二人の前で、ソレは起こった。
二人に興味を示していた金魚は、もっと近づこうとしたのだろう、小さい手を水槽に押し当てたのだがいかんせん濡れている。
よってツルリと手を滑らせ、その勢いでチョポンと水中へと沈んでいった。
「あ、滑っちゃいましたね」
おやおや、なんてしばし笑う二人であったが。
「・・・天ちゃん、変じゃないですか?」
「・・・や、やっぱり八戒もそう思います?」
「・・・こ、この子っ、溺れてませんっ!?」
「間違いなく溺れてますっ!」
水中に身体を沈めた金魚はそのまま泳ぎ出すハズなのだが、そんな素振りは全く見せず、尾びれや両手をがむしゃらに動かし苦しげに顔を歪めているのだ。
「金魚なのに溺れちゃってますよ!!」
「お店の人に教えてあげないと!!」
元々、さほど感情表現が激しい方ではなく、むしろ冷静沈着でクール。なんて言われちゃう兄弟であるが、本来泳ぐ生き物が溺れているという事態にそんな雰囲気欠片も出せない。
このままでは金魚が大変な事になるのだ。
慌て出す二人が行動に移そうとした瞬間、とても金魚とは思えない早さで泳ぎ出す黒い子が居た。
ドコで見ていたのか知らないが、尾びれを無駄なく動かし泳ぐというより、光の速さの如く移動する金魚は、一瞬で溺れている金魚に辿り着くととっとと身体を抱え水上を目指す。
水上に顔を出した途端、ぷはっ!と小さく口を開けた赤い金魚を抱えたまま、水上に顔を出しても特に問題もないのか黒い金魚も悠々と水草へと近づく。
「・・・仲間が助けてくれたんですねぇ」
「こんなに小さいのにとっても偉いです」
水草を掴めた赤い金魚は、小さいながらも「ふぅ~」と安堵して見せ、助けてくれた黒い金魚にヘラリと笑って見せた。
黒い金魚は「気にするな!」と言わんばかりに、ウンウンと頷いてみせる。
「このこ達、仲が良いんですね」
「きっとこの黒い金魚は、何度もこうして赤い金魚を助けてあげてるんでしょうね」
こんなに小さくても友情って芽生えているんだな。なんて、感動している二人であったが。
今、彼らは一連の光景を見たからわかったワケで。
つまり、見てなかったらわからないワケで。
となると・・・・。
「見てない人が・・・」
「このこ達をそれぞれ別々にお買いあげしたら・・・」
仲の良い金魚たちは引き裂かれてしまい、おそらく一生会う事は出来なくなるのだろう。
「それは・・・」
「ちょっと・・・」
これほど仲の良い二匹が離されてしまう。
その様子を想像すると、かなり胸が痛んでしまうのだ。
その場で立ちつくした二人は、しばし考え、やがて揃って店内へと入っていった。
「まぁ、こういう事もありますよね」
「はい」
天蓬の手には真新しい水槽と道具一式。
八戒の手には、少なめの水が入っているビニール袋。
勿論、中には赤い金魚と黒い金魚が仲良く入っている。
新たに増えた家族達に、二人の帰宅する足は自然と速くなったのだった。
呟くというか、思わず出てしまったらしい兄である天蓬の言葉に、隣を歩いていた八戒が思わずそちらの方向へと顔を向けた。
ソレほど新しい商店街ではないのだが、足元の石畳や店舗の外壁が、どことなく西洋を思わせる。
そんな町並みの一角に、その店はあった。
歩道と店舗を仕切る壁は一面のガラス張りで、店内にある水槽がハッキリと見て取れる。
ソコに泳ぐ華やかな彩りは、間違いなく熱帯魚なのだろう。
どうやらかなりの数を揃えているらしく、ガラス張りに沿って置かれている水槽には、珍しい色の小さい生き物が優雅に漂っている。
「へぇ、可愛らしいですね」
軽く答えると、どちらともなく向きを変え、店に歩み寄った。
ガラス越しとはいえ、尾びれを揺らして泳ぐ熱帯魚たちは、綺麗で優雅そのものだ。
見ようと思ったわけでもなく、ソレほど興味らしい興味があった分野ではないのだが、なんとなくガラス沿いに歩いて次々と水槽を覗き込む。
その水槽の一つに、その子は居た。
「あれ、天ちゃん見て下さい。ほら、この子」
首を傾げる八戒がチョイチョイと指さした水槽は、金魚の水槽らしい。
赤や黒、そして白を纏う金魚たちが、ヒラヒラと泳いでいるのだが。
「・・・あれ?」
八戒同様、水槽を覗き込んだ天蓬も首を傾げてみせる。
ヒラヒラと水の中を舞う金魚たちの中に、一匹だけ不思議な子が居たのだ。
透明な水に映える緑の水草たち。
その頼りない揺れる水草に必死に掴まり、顔を自ら水上に出している赤い金魚がいるのだ。
「・・・変な子ですね」
「ですねぇ」
キョトンと見ている二人に気づいたらしい金魚は、うんしょうんしょと水草を手繰り寄せつつ移動しガラスに近づいていく。
とてもじゃないが泳ぐとは言い難い姿に、目を離せなくなった二人の側に辿り着いた金魚は、チョコリと首を傾げて見つめている。
「ふふっ、この子、僕らに興味を持ってますよ」
「可愛いですねぇ。でも珍しくないですか?自ら顔を上げてるのに平気なんて」
「確かに」
頭の中を疑問でイッパイにしつつ、ただひたすら見つめ合う二人の前で、ソレは起こった。
二人に興味を示していた金魚は、もっと近づこうとしたのだろう、小さい手を水槽に押し当てたのだがいかんせん濡れている。
よってツルリと手を滑らせ、その勢いでチョポンと水中へと沈んでいった。
「あ、滑っちゃいましたね」
おやおや、なんてしばし笑う二人であったが。
「・・・天ちゃん、変じゃないですか?」
「・・・や、やっぱり八戒もそう思います?」
「・・・こ、この子っ、溺れてませんっ!?」
「間違いなく溺れてますっ!」
水中に身体を沈めた金魚はそのまま泳ぎ出すハズなのだが、そんな素振りは全く見せず、尾びれや両手をがむしゃらに動かし苦しげに顔を歪めているのだ。
「金魚なのに溺れちゃってますよ!!」
「お店の人に教えてあげないと!!」
元々、さほど感情表現が激しい方ではなく、むしろ冷静沈着でクール。なんて言われちゃう兄弟であるが、本来泳ぐ生き物が溺れているという事態にそんな雰囲気欠片も出せない。
このままでは金魚が大変な事になるのだ。
慌て出す二人が行動に移そうとした瞬間、とても金魚とは思えない早さで泳ぎ出す黒い子が居た。
ドコで見ていたのか知らないが、尾びれを無駄なく動かし泳ぐというより、光の速さの如く移動する金魚は、一瞬で溺れている金魚に辿り着くととっとと身体を抱え水上を目指す。
水上に顔を出した途端、ぷはっ!と小さく口を開けた赤い金魚を抱えたまま、水上に顔を出しても特に問題もないのか黒い金魚も悠々と水草へと近づく。
「・・・仲間が助けてくれたんですねぇ」
「こんなに小さいのにとっても偉いです」
水草を掴めた赤い金魚は、小さいながらも「ふぅ~」と安堵して見せ、助けてくれた黒い金魚にヘラリと笑って見せた。
黒い金魚は「気にするな!」と言わんばかりに、ウンウンと頷いてみせる。
「このこ達、仲が良いんですね」
「きっとこの黒い金魚は、何度もこうして赤い金魚を助けてあげてるんでしょうね」
こんなに小さくても友情って芽生えているんだな。なんて、感動している二人であったが。
今、彼らは一連の光景を見たからわかったワケで。
つまり、見てなかったらわからないワケで。
となると・・・・。
「見てない人が・・・」
「このこ達をそれぞれ別々にお買いあげしたら・・・」
仲の良い金魚たちは引き裂かれてしまい、おそらく一生会う事は出来なくなるのだろう。
「それは・・・」
「ちょっと・・・」
これほど仲の良い二匹が離されてしまう。
その様子を想像すると、かなり胸が痛んでしまうのだ。
その場で立ちつくした二人は、しばし考え、やがて揃って店内へと入っていった。
「まぁ、こういう事もありますよね」
「はい」
天蓬の手には真新しい水槽と道具一式。
八戒の手には、少なめの水が入っているビニール袋。
勿論、中には赤い金魚と黒い金魚が仲良く入っている。
新たに増えた家族達に、二人の帰宅する足は自然と速くなったのだった。
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